1983年、カシオ計算機から発売された「Gショック(G-SHOCK)」は、年齢、性別、国籍問わず、世界中で愛されている腕時計だ。
それまで精密機器である時計は「壊れることが当たり前」だったが、Gショックの誕生を境に、その価値観は一新された。
ところで、落下強度10m、防水性能10気圧、電池寿命10年の「トリプル10」を当初の開発コンセプトとしたこのタフネスの象徴は、たった「1行の企画書」から始まったことをご存知だろうか。
カシオが誇る技術者、伊部菊雄さん。彼は、言わずと知れたGショックの生みの親である。
誰もが知る「壊れない時計」というコンセプトは、伊部さんが高校入学時に父親からプレゼントしてもらった腕時計が、ひょんなきっかけで壊れてしまったことにより発案された。伊部さんはこう振り返る。
「会社で人とぶつかったときに時計が腕から外れてしまい、文字盤どころか、すべての部品がバラバラに飛び散ってしまいました。もちろんショックでしたが、それ以上に『精密機器である腕時計は、落としたら壊れる』という常識を目の当たりにしたことに感動したんです」。
「5段階衝撃吸収構造は、画期的な構造でした。しかし、どのような調整をしても、部品がどれか一個だけは必ず壊れてしまうんです。液晶を強化するとコイルが切れる、コイルを強化すると水晶が割れる。これがエンドレスに続き、もぐらたたき状態でしたね」。
「金曜日の晩には、解決策ではなく、辞表の内容を考えていました。上司に『基礎実験をやっていない企画なので、できませんでした』と今さら言い出すことはとてもできず、ケジメをつけなければならないという一心でしたね」。
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